2008年5月2日金曜日

五月だからこの話


名前を考えていました。

これから情熱のすべてを傾けていくと決心した事を見失わない為に、
これから出会う人達によく見える様に高く掲げる旗印は何がいいのか。

確かなイメージがあるのに言葉にするとまわりにあった淡い光が消え落ちて
意味が明確になりすぎて、息苦しくなった。

考えるのをやめてしまおうか・・。

当時はかなりトンガっていたから、
気が付けばまわりに誰もいなくなってしまっていることがよくあった
(実際はいなくなった様な気がしていたというほうが正しい)

「もうダメだ・・」となるといつも足が自然と向く小さなイタリア料理の店。
カウンターに座りビールとワインに酔いボソボソと愚痴をマスターや婦人に聞いてもらう。
何を話してもただ聞いてくれる。
ニィッと口の端で三日月の様に笑いながら、ただ聞いてくれたのでした。

そのうち隣の席で飲みはじめ、店を閉めてただ一緒に飲んでくれるのでした。
・・ありがたかったなぁ。

イタリアを旅していた頃に安いという理由でよく飲んでいた
緑地にカラスのマークのCORVOというシチリアのワイン。(3000リラ250円ぐらいだったか)

ワインブームの入口だったせいか緑のラベルをたまたまその店で見つけた。
懐かしい味でした。・・これだな・・。

美味しくないけど・・うまいなぁ・・これだ。

鳥肌が立ちました。

マスターは数年前に亡くなってしまったけれど、店は青年二人に引き継がれて
みんなを喜ばせた。
2007年の年末にささやかな忘年会に招待していただき久しぶりにその店に顔をだすと
「いらっしゃると聞いていたからCORVOを発注しておいたんですよ」なんて嬉しい事を言う。

マスターの穀雨の中の葬式で号泣してから、どうも涙腺がゆるくなったようで、
ワインが一本あく頃、話していたら突然泣けちまってまいった。


俺の中の根本にある「店という場所」の価値感はこういうところにあって、

旗印とスローガンもそのあたりに突き刺さって

今でも風に吹かれているのだ。